魔法の行為 一つの皿で食べる

私は寝正月ならぬ、寝イードを過ごしました。

朝早くに羊たちの最期を見に行く予定が、様々な理由でキャンセルに。

 

金土を本当に自堕落に過ごし、家にある野菜をもしゃもしゃ食べては寝、日曜日を迎えるとさすがの私も暇になり、クロワッサンを買いに外に繰り出してみました。

 

帰りに自分ちのふもとにあるカフェに行くと、結構いろんなお兄ちゃんたちがたまっているんですね。一人で風でも浴びながらコーヒー、と思っていたら、彼らが手招きし、一緒に話そう。と言ってくれた。

 

ここのところよく見かけるこのお兄ちゃんらは、みんな30代のごく普通のチュニジア人という感じで、5人いたうち二人は無職。どおりでカフェでよく見かけるわけだ。

彼らはみなメディナで生まれ育ったいわば江戸っ子的存在。メディナ内の社会について語ってもらうと、これがとても面白いのです。

メディナは、歩いてみればわかるように、家と家はちかく、道は狭いため、コミュニティーもだいぶ密なのだそう。チュニジア人、あるいは少なくとも彼らのコミュニティーの中では、

「同じ皿から食う」

というまるで魔法みたいな儀式があり、これをすると、同じ皿から食った相手には絶大の信用と友情が生まれるのだとか。

さらに、一つの皿から食った友達で長年の付き合いになると、相手の家の一部や部屋も出入りが自由になる。これにはいくらか暗黙の了解があり、キッチンと友達の部屋はOK、みなりはふしだらでないもの、汚い言葉を吐かない…とかがあるといいます。

また、一つの皿友達とはけんかをしても、最大でも2日で仲直りするのが常識だそう。ぐちゃぐちゃ言い合っても次の日にはケロっと、な彼らです。

これには正直びっくりしましたが、なるほどしっくりくるところもあります。チュニジア人の友達というのは総じて、急に距離が近くなる時があり、戸惑うんですよ、そんなに近い関係だったっけ?みたいな。

思い返してみれば、そういえば、家に招いてもらって、一緒にクスクスを食べたよなぁ…とかそんな記憶がよみがえる。一緒に食べるというのは、あなたといい友情を期待しますよ、というサインでもあるのですね。

ただこれはメディナや村など伝統的地域限定で、もちろんラマルサやエンナセルはこの限りではないようです。