チュニジアのムスリムとの暮らし方

わたくしは・・・チュニジア人の家庭で居候を始めてかれこれ約1年が経ちます。

事情はいろいろありますが。何よりも文化人類学的な勉強になっている気がします。

ところで、

チュニジア人ってムスリムですよね。いくら言葉が通じるとはいえ宗教的に慣れないことってあるんじゃないの?と言うような質問をよくいただきます。

はい。

もちろん、そもそも生まれも育ちも日本だったものですからたくさんのハテナ?ありました。私はムスリムではありませんのでことに宗教関係。日本ではイスラム教徒まったく接点のない生活を送っていました。知りたいけどあまり触れちゃいけない気がするこの話題にあたってみましょう。

1 イスラム教に勧誘されない?a-muslims-prayer-namaaz

うーん、されない!とまでは言い切れませんが、強い勧誘を受けたことはありません。たとえば、日本に多くいる一部のキリスト教派の団体は、勧誘行為が宗教上奨励されているので街中で見ることはあるかもしれませんが、チュニジアのイスラム教においては特にありません。ただ、宗教は何?と尋ねられることはよくあります。私はその際、特にこれといった宗教はないけれど、文化的に神道と仏教は信仰しているよ。と言います。

ただ、これをいうと、じゃあ神様のこと信じてる?その神様って誰?っていわれます。ちなみに「アッラー」と言うのはアラビア語で「神」と言う意味です。アッラーと言う名の神が存在するわけではありません。彼らにとっての神は唯一のものであり、宗教はともかくひとつの神を信仰しているかというのが問題らしいです。たとえば神道は多神教であり、各神社によって祀る神が異なります。これはイスラム教徒にとっては納得されないことみたいです。

イスラム教かはさておきともかく、強く信仰できる宗教は持ったほうがいいよといわれます。精神的に安定するし、神様が自分と一緒だと思えると言うのは厳しい人生の中では非常に心強いんですって。

日本は七五三や結婚式とかは神道式で、除夜の鐘とかお葬式は仏式だったりするので説明が難しいですね。神仏習合という習慣はいまだ残っていますし。宗教が伝統行事に反映されて、行事そのものがひとり立ちしてしまっていると必然的に信仰そのものとは切り離されて考えられますよね。困ったときの神頼みではないですが、一時的に信仰するのは宗教じゃないと言われても仕方ない気がします。

2 食べ物はどうしてるの?

halalイスラム教徒に合わせています。つまり、有名なところは豚肉は食べません。それに食べる料理はすべてハラル食品から出来ています。豚肉はそもそもチュニジアではなかなか手に入りません。外国人用のレストランなどに行くとたまに豚肉料理が提供されていますがそれは少なくともチュニジア人と同席の際は控えるようにしています。ハラル食品ですが、これは宗教的な簡略された祈りを唱えられて屠殺され完全に血抜きをされた肉など、規定のある食品です。少なくともチュニジアでは表記が逐一されてなくとも食材はハラル食品が売られています。

 

3 イスラム教の国だから観光客でも女の人はベールとかかぶらなきゃダメ?

そんなことありません。チュニジアはイスラム教の国ですから、女の人は割りとスカーフで髪をしまっています。turnout-for-saudi-women-voters-is-extremely-low-1441036353でも、そのスカーフもお洒落。真っ黒しかないわけではありません。特に最近の若いチュニジア人は髪を出したり、染めたりもしています。もちろん、私はイスラム教徒ではないので髪出してます。日本人の髪は結構ほめられます。ただ!もし観光などでモスク内に入るとき、あるいは式典などに招待され、みんなでお祈りを唱えるときなどでは宗教に対する敬意を込めてムスリム同様スカーフで髪を隠したりベールをつけるべきです。

服装ですが、ミニスカートやショートパンツつまるところ、ひざの出る洋服は着ないです。チュニジア人の家庭の中では着ないで・・・って言うオーラがでています。ですから寝るだけですね。ノンスリーブスは結構ですが、胸元の広い服は避けたほうがいいでしょう。チュニジアにはモダンな格好をしている女性がたくさんいますが、それでも露出度の高い服を着ている女性は年齢問わずいません。着ていることは恥ずかしい事ですし、男性に体を売っていると勘違いされがちですのでいけません。

4 お酒って飲む?

celtia実は私、日本の学生時代は体育会系に所属している関係で結構飲みました。終電逃したり。

が、チュニジアでは避けています。彼らが禁じていることを目の前で平気でするのはよくありませんからね。もちろんチュニジアでは大きな礼拝のある金曜日以外はスーパーマーケットなどで購入できますし、レストランでもお酒を出しているところが多いです。しかし、きちんとした家庭ですとお酒が好まれないことが多いです。仮にお酒を飲んだ日があっても両親と住んでいる場合は酔いが完全にさめ、匂いがなくなるまでは家に帰らないという家も多くあります。ま、若いころはチュニジアのみなさん少なからずお酒は飲んでいるんですけどね、正直。やはり結婚後は身を慎むようです。

5 じゃあタバコは?

chichaチュニジアの喫煙率はすごいです。そこらじゅうで休まず吸ってます。カフェでの水タバコでしたら2、3時間すぱすぱしてます。国としても歩きタバコなどを禁じておらず、どこでも喫煙が可能です。イスラム教ではお酒はダメだけどタバコに関しては特に厳しくは書いていないんですね。ですからタバコに関しては比較的自由なんです。 ただ!お約束なのは、絶対に親の前ではタバコを吸いません。どんなにヘビースモーカーでも両親の前では決して吸わないんです。庭に行ったり、外へ出たりして吸います。いえ、内緒でこっそり吸っているんじゃないんです。パパもママも息子がタバコ吸ってるなんてこと、とうの昔に知っています。しかし、日本でも同席している目上の人がタバコを吸っていない場合は自分が喫煙者でも控えるのと同様、年配の人に対する敬意から、彼らにとっては神の次に尊敬すべき両親の前では吸わないんですね。

・・・ちなみに、ドラッグは宗教上も法律上ももちろんご法度です。チュニジアでも日本同様、法律で禁止となっています。ただ、チュニジアでは入手が容易でいわゆる薬をタバコに混ぜて何気なく吸っている実際多くいます。そういう人とは個人として付き合わないようにしましょう。

6 宗教が違うと反感を買いますか?

そんなことないです!イスラム教はその名の如く平和な宗教なんです。実はコーランには、イスラム教徒であることを理由に他宗教信仰者に攻撃されたら防衛のために反発しても構わないが、イスラム教が否定されない場合は他宗教者でも攻撃してはいけなく、むしろ共存しなければいけない。と解釈できることが書いてあるのです。ですから少なくともチュニジアでは宗教が違うことで批判されたりすることは彼らを批判しない限りはないでしょう。もちろん宗教問わず人道に外れたことをしますと批判されます。

 

正直、チュニジアって日本と比べて治安良くないですし、衛生的でないですし、犯罪率も高いですし、ごみが道端にいっぱいあるし、落書きだらけだし・・・いくら宗教でいろんないい教えがあっても意味ないじゃんって思っちゃうかもしれません。

まあ、どこの国でもいい人悪い人います。

チュニジアのいいところは宗教的な理由なのか厳密には分かりませんが、赤の他人にも親切に出来ることです。電車の中ではどんなにチャラそうな兄ちゃんでもお年寄りが目に入れば席譲るし、貧しくて外でお金を乞うているひとに気取った感じのおばさまが食べ物をあげたり小銭を渡したり、というような場面は日常何度でも見れます。

それこそ私が町を歩いているとき突如首からじかにネックレスを奪われたとき(!!!)なんかもう、みんなで「だいじょうぶかーっ!」って集まって大通りまで送って行ってくれたり、警察に教えてくれたり、携帯貸してくれたり、お水かってきてくれたり・・・むしろすみません、ってくらいでした。

いくら日本ではこんな状況に遭遇しにくいからとはいえ、見ず知らずのしかも外国人に対してこんなに親切に出来るかな?と思います。だって優先席に座っておいて寝たフリしたり気付かないフリしちゃう人が多いような国ですもん。同じ労働力でチュニジア人の10倍20倍も稼げるからって日本人が偉いわけではまったくありません。人間的にどうかと言うのがその人の価値を決めます。

やっぱりお金とか治安の問題なんかじゃありません。気持ちの問題です。

 

そう、それで、私は先に述べたようにチュニジア人の家に居候して一年が経ちます。

この家庭は別に特別厳しいムスリムではありません。いつも家にいるお母さん以外は毎日毎回お祈りしていないし、金曜礼拝だって息子たちは一年に1,2回くらいじゃないかな。それでも神を信じ、恐れ、愛し、両親を心から大事にしようと言う気持ちがあって強いんです。だからこそ、私みたいな非ムスリムだって「一人間」として素直に受け入れてくれる。宗教違うからなんていう偏見はまったく有りません。

私は周囲の人からは「ジャポネイヤ」としてみられています。まあチュニジアの事知っていても言葉がはなせてもこのぺらっとした顔は変えられませんからね。外国人の全然いないような地区に住んでいますし。

でも、「非ムスリム」という目で見られることはないです。家の人は「私」としてみてくれるし、若干のカルチャーショックはお互いあっても問題ありません。たぶんチュニジア人社会で暮らしているかぎりは宗教的批判や偏見に関して心配する必要ないです。彼らの強い気持ちは変わらないし、ぶれないし、逆に言えば私のような外国人に対して開けている心を持っているし。

 

ほんとうに、お金とか治安の問題なんかじゃありません。彼らの持っている気持ちの問題なんです。