チュニジアでの日本語イメージ
今日はコラムになりますが。。。
日本人にとってチュニジアは印象の薄い国かと思います。行く機会のあった方は別として、チュニジアってそもそも世界のどこにある国なのか分からないし、どういう人何語で話しているのかさえイメージが湧かない人のほうが多いはず。
我々日本人は日本はチュニジアよりもはるかに大きくて有名な国、と自負してしまいますが実はチュニジア人も日本という国に対して曖昧なイメージを持っている人がたくさんいます。
それこそ街を歩いていれば「ジャポン!」「ニーハオ!」なんていろいろ声がかかりますがそれは私たちが見るからに「外国人」だから。チュニジアはヨーロッパから近いだけにヨーロッパ系のアラブ人もたくさんいるため欧州顔には慣れています。もちろんアフリカ大陸でもあるのでブラックアフリカンもまちでわりと見かけます。なので彼らはあまり「外国人」と認識されません。それに比べてチュニジアにいるアジア人というのは少ないものです。稀少価値のある私たちはちょっと茶化してみたい、どういう反応するんだろう、というような好奇心から声をかけられたりします。
よく、チュニジアでは道端でも日本人ですか?と聞かれます。アジアの国の中で日本は一番発展している、というイメージと世界中に観光客がいるからでしょう。しかし、はい私は日本人ですよ。と反応した後は大抵「ニーハオ!」と返ってきます・・・日本人って言ったじゃん。と思うのですが、彼らにとっては日本という国はあっても「日本語」というものの存在が薄いようです。ところでチュニジアはアフリカ大陸にはありますがアラブの国、彼らの公用語はアラビア語です。アラブ人は各国皆さんアラビア語を公用語とし、今やアラビア語話者は世界で5番目に多いといわれています。だから当然、アラブ人はみんな同じアラビア語を話す。アジア人もみんな同じ言葉を話す。というイメージがあるのかと思われます。中国人はニーハオというんだから日本人ももちろんこうやって話す!という勝手なイメージですね。
アラブ人はアラビア語を話すとはいえ、アラビア語の中にはとても複雑な方言が存在します。日本語の関西弁と東北弁という違いではなくスペイン語とポルトガル語くらいの違いがあります。中東各国には中東のアラビア語があり、チュニジアにはチュニジア方言があります。ニュースや新聞のアラビア語は正規アラビア語、いわゆるフスハーですがこれを口語として会話に用いることはありません。ですから一概にアラビア語を話すアラブ人とは言えどもアラブ圏の中では言葉は異なるのです。
チュニジアでは日本のことを学校で習います。どうも地理の授業では北海道についてのページが教科書に載っているくらいですし、テレビでもナショナル・ジオグラフィック・アブダビで特集がやっていたりして一概に「アジア圏」としてひとくくりにはされておらず日本は単体でイメージがあるみたいです。
とはいえ時々中国と日本の面積はどっちが大きいの?というようなとんでもない質問をされます。人口は中国が世界一なのは知ってるけど、エリアはどうなの?という素朴な疑問なのでしょう。それとも日本も世界で10番目の人口をほこるくらいだから、それはそれは大きい国なのだろうと思うのでしょうか。・・・我々日本人としてはお隣の国中国の面積は世界でもかなり大きいんですけどそんなことも知らないの?と思います。とはいえ私も恥ずかしながらチュニジアに来る前まではアルジェリアとチュニジアってどっちの面積が大きいの?というチュニジア人にとっては非常識な質問をしていたくらいですからおあいこかもしれません。チュニジア人は当然アルジェリアがアフリカ大陸で一番大きい国だということを知っています。が、私は知りませんでした。やはりチュニジアは日本から遠い国なのです。
チュニジアには日本語を習える学校が国に一つしかありません。(ブルギバスクール)それゆえ興味のある人でないと日本語に触れる機会はありません。マンガを知っている人もアニメを見る人もオリジナルの言葉が日本語である、というイメージがないのです。日本人は「ワチャーッ、ハチャーッ」としゃべっていると思われてる。チュニジアでドラマも放送されたブルース・リーも日本人か何かだと思われている。われわれもアラビア語はアラビア語、中近東の人が話す言葉と思い込んでいますから仕方ありません。
それからチュニジア人に、日本人の第2言語ってなに?と正直な質問をされますが、これにも困ってしまいます。チュニジアは元フランス植民地。よって一時期は半強制的にフランス語で授業がなされることもありほぼ公用語となっている世代がありました。独立してかなり経ちましたが現在も尚フランス文化は息づいておりチュニジアにおける国際言語は正式にフランス語、公用語はアラビア語ですが正式文書などはフランス語で書かれることがおおくあります。学校でも小学校からフランス語の授業が始まり英語は中学校から、とフランス語の優先度がわかります。よって彼らの第2言語はフランス語で、外国語、という概念はありません。
一方日本ではどうかというとそんなものは存在しません。英語は確かに中学校から義務教育で習いますが、中学高校での進学に必要な英語は生活の足しになるレベルに達していません。私たちはグローバル社会に生きるかもしれない子供の将来のために英語を習いはじめるのであって、日本での生活を豊かにするためには学習していません。あくまで第1外国語としての存在にあります。よって私たち日本人が一般的に最初に習う外国語は英語ではありますがもちろんチュニジアで言うフランス語のような第2言語ではありません。私たち日本人はもっていませんね。ですから逆に言えば日本は外国人にとってなかなか住みづらい場所であるのかもしれません。
チュニジア方言のアラビア語にはたくさんのフランス語、イタリア語の名詞が混在しています。アラビア語に堪能な人でもその単語が分からないために意味が通じないこともあるようです。日本で言うカタカナでかかれる外来語以上に使用することが多くあります。
最初はニーハオといわれて私は日本人だぞ!と、カチンときていましたがこのような背景を考えるとなんだか道理にかなっているというか仕方ないな、という気持ちになります。私たちは私たちで日本語を大切にしていきたいですね。