お札に書かれたメッセージ

チュニジアで買い物をすると日本ではありえないようなお金がお釣りとして返されたりします。

片面がツルツルになってほとんど絵や数字が見えなくなっている1ディナール硬貨、淵がやたらと傷つけられ、ぼこぼこの100ミリーム硬貨など平気で使用しています。

銀行のATMから出てくるお札も例外ではありません。

例えばこんなの。

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銀行のATMからこのようにへろへろで、しかも何か書いてある!というお札が出てきてしまうんですね・・・

普通(?)お札に書かれているのは数字だったり、人の名前だったり、おそらくこのお金を誰かに渡すときにメモではなくて直接お札に書いちゃった!というのりなのでしょう。

IMG_20160518_113040_Rしかし、今回は違いました。書いている文字をご覧下さい。解読してみると、アラビア語で ?وينو البترول  ♯(ウィヌ・ペトロール/winu pétrole? )と書いてあります。前に記したようなメモではありません。具体的なメッセージです。意味はチュニジア方言で(石油はどこだ?)です。さて、なぜ石油はどこ?なんてお札にわざわざ書かれているのかというと、これには面白い理由があります。

チュニジア周辺北アフリカマグリブ地方には実は石油があります。リビアやアルジェリアからも石油が発掘されており、それによって富を得た国民もおり、国としてもかなり潤いました。(ただし、両国革命が起こったため、富裕層は資源そっちのけで国外に逃げた!)その間にあるチュニジアにも論理的にもちろん石油が埋まっています。近日チュニジア南部で砂漠や不毛地帯の領有権を巡って個人同士が喧嘩しているのもこれが原因ですね。それにもかかわらず、なぜチュニジアという国が貧しいのかというと、国に石油開発をする資金が無いため、石油を発掘できていないからなんです。チュニジアの政治の現状は政治家が国民の税金をたんまりともらい、ろくな政治もせず、社会システムも整わない悪政が革命後も続いているよう。チュニジアは唯一革命の成功したアラブ圏であるにもかかわらず、システムがあっただけベンアリ時代のほうがマシだった!とまでいう国民もいます。国が税制を整え、行政システムを改善し、無駄な税金使いをやめれば石油開発をする資金を国が援助するだけのゆとりができて、国も潤い、われわれの生活も楽になるのでは?と言うのがチュニジア人の言い分。

で、なぜそれをお札に書いたの?ということですが、ここからは知り合いのチュニジア人による推測。

このお札を君が使えばやがてこれは生活ぎりぎりの人から富裕層まで色々な人の手に回る。もしかすると銀行員や政治家にまで渡るかもしれない。このメッセージを書いたのは誰かわからないけれど少なくともこの紙幣を手にするみんなの目に入るし、それぞれ多くが抱いた気持ちがいつか政治家や権力者に伝わって国が豊かになって生活が楽になればいいのに・・・という意味なんじゃないかな。

だそうな。なるほど。日本だったらとっくに破棄されるから目に付かないだろうけれど、ダウンロードチュニジアなら十分ありえる。ちなみに、この文?وينو البترول をグーグル画像で調べるとなかなかな面白いものがでてきました。例えばこちら。

チュニジア近辺の地図です。水色の地中海部分にはサルディーン(イワシ)右の黄色部分、リビアと左の黄色部分、アルジェリアにはペトロール(石油)真ん中の白い部分、チュニジアにはプサル、トマーテム、ファックース、マードヌース(たまねぎ、トマト、キュウリ、パセリ)と書いてあります。周辺国は石油で儲けてるのにチュニジアだけ野菜!なんなんだーという皮肉でしょう。

large-929461883888603698実はチュニジアにも石油があるぞ!と分かった直後にデモが起きていた模様。そのときの合言葉がこの言葉だったらしく、ニュースにもとり上げられています。?وينو البترول と書いたプラカードをもってかなりの数の人が集まっている写真がありました。

チュニジア、われわれ日本人は物価が安く、食べ物も家賃も大してお金かからず楽しい!なんていって生活していますが、チュニジア人の一般的なお給料でこの国で暮らしていくとなるとかなり物価は高いです。日本人の給料で日本の物価の倍くらいと考えればいいのではないでしょうか。それほど切り詰めて生活しなければならない人がほとんどのようです。

私個人としてもチュニジアが中東諸国のように・・・までは行かなくとも石油開発で国が豊かになって、チュニジアの行政や医療が高水準になり、物価も安定して国民が穏やかに暮らすことが出来る世の中が来ればいいのになぁ。と思うのでした。

まさか10ディナール札一枚だけでこんなに考えさせられるとは!いやはや。