暗黙のガソリン

さて、先日西部のアルジェリア国境付近へ行った私はチュニジアの所有する自然の雄大さに感動していたのですが、同時にたくさんの発見もありました。

西部は北部や中部、海岸沿いとは違い、田舎です。また、南部の乾燥地方の過酷な田舎具合とも違い、さわやかな自然を楽しめるところでした。

ここはアルジェリア国境付近。アルジェリア領まで30キロほどの小さな町。街には家と小さな売店とカフェくらいしかありません。しかし、こっそりあちらこちらにおんなじ様なお店があります。

そう、個人のガソリンステーション。ここは西部、公共交通手段のない野原の向こう側です。各家庭には農業用なり仕事用のバイクや車があります。しかし、都市で見るようなShellやAgilなどのチェーンガソリンステーションを見かけません。そのかわりに、この個人が経営しているステーションで給油をするのです。街の中心へ行けばガソリンステーションはありますがこれはあくまでも外者用。知っている人は個人のガソリンステーションへ行きます。

筆者も西部出身のチュニジア人とレンタカーで行ったのでそこへいく機会がありました。実はこの個人のガスステーション、ほぼ8割が違法です。というのも、このガソリン商人たち、国境を越えてアルジェリアへ行き(合法)ガソリンを個人同士で売買し(違法)チュニジアで許可書無しに個人で販売(違法)しているのです。そういえば西部でガソリンタンクを100個くらい積んだトラックが猛スピードで走っていましたが、見つかると没収+処罰されるからなんですね。

ちなみに、

IMG_20160522_185309_R

こんな感じの何もサインのないガレージの前に白いガソリンタンクが幾つか並べられているのが、アルジェリア産違法ガソリンステーションのサインです。

興味津々の私におばさんがニコニコしながら中を見せてくれました。

IMG_20160522_185114_R IMG_20160522_185140_R

ガレージの中タンクだらけ。全部アルジェリアから直運送です。

なかに招き入れてくれたおばちゃん、かわいいわね、フランセィーヤ(フランス人)?

・・・この平たい顔が目に入らぬか。すかさず友人がいやいやジャポネイヤだよ~!

おばちゃん、あらーメッカよりも遠いわねぇ・・・

西部の田舎の方々にとって私めのような日本人は、いや外国人は珍しいらしく、彼らにとってのガイジンさんはみんなフランス人らしい。

IMG_20160522_185434_R

わかいやさしそうな兄ちゃんがペットボトルで作ったじょうごを使っていれてくれます。

西部の人たちがこうして違法アルジェリアガソリンを購入するのにはもちろん理由があります。ガソリンステーションが無いからではありません。このアルジェリア製ガソリンは燃費がよくてパワフル!とのこと。値段はタンク一個で25ディナールくらい。現地人によると、ガソリンステーションと比べて別段安く売られているわけでもなく、アルジェリアで直接購入すれば3分の1くらいで買えるとのこと。でも皆さんリスクを抱えて国境を越えて運送しているので同じ値段でも強いガソリンなら文句は言えない・・・らしいです。難点としては、このガソリン、不純物が若干混ざっているとのこと。細かいフィルターに通されていないので繊細な車に毎日入れるにはよくないとか。しかしポンコツ車でも走っているチュニジアならこのくらい強いガソリンは大変心強いとかなんとか。

みんなこうして暗黙の了解で生きているのです。