ラマダンとセアンス・ユニックについて

2016年度は6月6日月曜日からイスラム歴のラマダンに入り、同時にセアンス・ユニックが始まります。

聞いたことあるけど、厳密に何なのそれ?・・・という方に。回答。

  • ラマダン

ラマダンとはヒジュラ歴(イスラム歴)の第9月目の月の名前です。通常はチュニジアでも世界基準の太陽暦カレンダーが使われていますが、宗教行事はこのイスラム暦に則って行われています。イスラム歴とは太陰暦であり、昔の日本も太陰暦のカレンダーを使っていました。日本の暦にも弥生や神無月など名前があるようにイスラム歴にも各月に名前が付いており、その一つが「ラマダン」と呼ばれています。太陰暦ではひとつき28日なのでラマダンも28日間です。太陰暦が月の満ち欠けによって定められているため、今年は通常6月6日からと言われているとはいえ、もしかすると7日になるかもしれず、前日になるまでいつから始まるかがわからないのです!太陰暦は太陽暦と日数が違うので一般に世界基準として日常使われている太陽暦で換算すると毎年ずれが生じます。それゆえ毎年ラマダンの時期も変わり、厳密には毎年約11日ずつ早まります。

このラマダンの月にはムスリムは断食を行います。断食といっても日本でイメージする水断食(水のみを摂取し、食べ物は一切口にしない)とは違い、食べてもいけませんし、飲むことも許されません。しかし、ラマダン期間中ずっと断食を行うのではもちろん無く、日の出ている時間のみ断食を行います。日没後の夜の間は飲食が出来ます。今年のようにラマダンが夏期にかぶっている場合は日照時間も長く、よって断食時間も長くなり、過酷なラマダンとなります。今期のように日中時間が長いラマダンの場合、日の出が朝3時、日の入りが夜7時半ごろのため16時間ほどの断食を行うことになります。

このラマダン中に断食をしなくてもいいとされているのは、病人、妊産婦、子供、重労働者となっています。一般的にラマダン期間中に何らかの理由(一時的な体調不良、生理期間、旅行中の場合)は無理をして断食を行わなくてもいいとされていますが、ラマダン終了後、次の年のラマダンまでに断食を行わなかった日付分を断食しなおす必要があるといわれています。異教徒はこの断食を強いられることはありませんが、国によっては期間中に公共の場での飲食を行ったものは罰せられることもあります。チュニジアはツーリスティックレストランなどは開いていますが一般的に飲食店は日中閉まっています。

夏のチュニジアは日差しが強く、気温が大変高いため大変のどが渇きますが、・・・飲めません。飢えよりも乾きがつらく感じられます。そのため、多くのチュニジア人は日中室内にこもり昼寝をします。宗教的にも飢えや渇きをしのぐために昼寝や入浴、歯磨きなどをすることは認められています。人々は午後3時ごろから活動しだし、日没後の盛大な夕食(イフタール)の準備を始めたりします。一般オフィスなども早めに閉まるため人々も通常よりも早めに仕事を終えたり、店が閉まったりもします。

この日没後の食事は通常の夕食よりも盛大に振舞われます。各家庭でフルコースが作られ、人々はゆっくりと飲食を楽しみます。特に夏の場合は非常にのどが渇いているので水をおもいっきり飲みたいところですが、それは体によくないとされ、ライーブやルベンなどの発酵乳やスープから口にし、その後水を少しだけ飲んで食事を開始します。3食分の特別な食事のため、ラマダン中の食事は通常の倍の量になるとも言われています。また、ラマダン中は夜遅くまでカフェが開いていたり街が活動的になっているため夜食が増えたり、糖の摂取が増えたりと、断食中にもかかわらず体重増加する人が多くいます。

しかし、もともと食の少ない人(我々日本人など)がチュニジア人断食を行うと最初の前菜だけで満腹を感じます。そのため、一月で数キロ体重が減少します。国全体がラマダンの雰囲気となり、断食のためにレストランが開いていなかったり、食事も日中は作られないため食に対する欲も断たれやすくなっています。

イスラム教徒でない観光客やチュニジア在住者はもちろんラマダン中の断食は義務付けられていません。上にも記述したとおり、観光地周辺の飲食店は開いているお店もあります。ただし、そこで働く人や周囲のチュニジア人は外にいても断食を行っています。ラマダン中に外で飲食する場合は周囲の人に配慮して行いましょう。

ラマダン最中は飲食関係外のお店(装飾品店など)も日中は閉じている場合があります。または、日没夕食付近になると一時的に店が閉められる場合もあります。

逆にイスラム教徒でなくともこのラマダンの断食に参加することは可能です。むしろ異教徒でも歓迎されるでしょう。断食を行うことでチュニジア人がどのようにこの期間を過ごすか実感できますし、断食を終えたときの達成感を共有できるでしょう。おいしい夕食も待っています。ただし無理は禁物。特に夏場のラマダンは予想以上に過酷なので慣れていない人は体に負担をかけすぎないように気をつけましょう。

ちなみにラマダン明けはアイード・アル・フィトルという祝日になっており、この期間は3日間断食の終わりを祝います。ラマダン中に開いていたお店もこの期間は全て閉まり、チュニジア人は皆さん地元へ帰り家族でお祝いをします。この期間もまた断食明けの夕食よりもさらに盛大な食事が用意され、プレゼントを交換したり、新しい服を着たりと華やかな雰囲気になります。この期間のチュニジア旅行はあまりお勧めしません。多くの施設が閉まってしまいますので異教徒、又はチュニジア人とかかわりの薄い人はつまらないかもしれません。この祝日は一般にアイード・サギール(小さいお祭り)といわれ、各家庭で羊をいけにえにささげる4日間の祝日がアイード・アル・アドハーはアイード・クビール(大きいお祭り)ともいわれ、この二つの祝日はムスリムの中で大変重要な行事ともいえます。興味のある方は親しいチュニジア人家庭にお邪魔させてもらうといいでしょう。

  • セアンス・ユニック  Séance unique

これは全くなじみのない方が多いでしょう。チュニジアは北アフリカ乾燥地帯、夏場は非常に暑くなる地域です。日中は40度を越えることが珍しくないため、多くの人が外へ出ることができません。このセアンス・ユニックとはチュニジア独特の政策であり、夏期(6月頃から8月頃まで)はオフィスや郵便局、銀行などを半日営業にすることが公式に認められています。政府関係の機関や銀行、郵便局、オフィスなどは14時ごろに閉まります。通常のお店は開いていますが、今年はラマダンと同時にセアンス・ユニックが始まりますので開店時間が変更されている場合がありますので気をつけましょう。また、行政関係に用のある方はなるべく午前中に済ませるように心がけましょう。